みのりは思わず急須を置いた。
母を押し退けるようにしてリビングを覗くと、父と亮は立ち上がり、父は先ほど玄関でしたのと同じように、亮の胸倉に手をかけていた。
「待っ――」
「行っちゃだめよみのり。お茶を淹れなさい」
父を止めに入ろうとしたみのりの手首を、母は思わぬ力で掴んで引き留めた。
「さあ、お茶を淹れなさい。渋くなるから早く。最初からやり直したいの?」
「……」
今あちらへ行かせる気はないのだ、と悟った。
茶は口実に過ぎない。
だがみのりは、素直にその言葉に従った。
もう茶が入る、そうすれば向こうへ行ける。
もう一度頭からやり直すなど、冗談じゃなかった。
少量ずつ茶を注ぎながら急須が椀を一周したところで、母が耳元に囁いた。
「女の出る幕じゃない、今は」
――じゃあ、いつなのよ。
盆に茶托と椀を並べながら、みのりは奥歯を鳴らした。
母を押し退けるようにしてリビングを覗くと、父と亮は立ち上がり、父は先ほど玄関でしたのと同じように、亮の胸倉に手をかけていた。
「待っ――」
「行っちゃだめよみのり。お茶を淹れなさい」
父を止めに入ろうとしたみのりの手首を、母は思わぬ力で掴んで引き留めた。
「さあ、お茶を淹れなさい。渋くなるから早く。最初からやり直したいの?」
「……」
今あちらへ行かせる気はないのだ、と悟った。
茶は口実に過ぎない。
だがみのりは、素直にその言葉に従った。
もう茶が入る、そうすれば向こうへ行ける。
もう一度頭からやり直すなど、冗談じゃなかった。
少量ずつ茶を注ぎながら急須が椀を一周したところで、母が耳元に囁いた。
「女の出る幕じゃない、今は」
――じゃあ、いつなのよ。
盆に茶托と椀を並べながら、みのりは奥歯を鳴らした。


