【完結】遺族の強い希望により

「行こう」

静かに促される。
あの勢いで威嚇されたのに少しも取り乱さない亮が、半端な覚悟でここに来たわけではないことが伝わってきた。


未だに逃げることばかり考えている自分が情けなかった。
殴られて当然のことをしたのは本当に彼なのか。
亮は本当に父に殴られないといけないのか。

――そうじゃない。ぶたれるべきは……。


「……入って」

再び顔を上げた時、みのりの顔からは迷いが消えていた。
それを見た亮は僅かばかり驚いたようだったが、すぐに力強く頷いた。

ここは他でもない自分の家なのだ、という自覚をもって、みのりは父が乱していった客用のスリッパを亮のために並べ直した。


玄関のドアはゆっくりと閉まり、ラッチが嵌る音と同時に外を遮断する。
先にリビングへ向かったはずの両親は異様なほどに物音を立てなかった。

静まり返った家の中は不気味だったが、すぐ近くに感じる亮の存在はみのりを強くした。