【完結】遺族の強い希望により

「私のため……?」

エレベーターのボタンも、亮が押した。
機械が降りてくる唸るような小さな音が段々近づいてくる。

「まさか」

と、亮は笑った。

「俺たち2人と――、俺たちの子の、ためだろ」

それを聞いて、みのりはまた泣いてしまいそうだった。


「なかったことになんか、しなくていいからな」

1階に到着したエレベーターのドアが開く。
箱に乗り込む瞬間、彼はそう言った。

乗り越えることと忘れることとは違うのだと、みのりが自分では出せなかった問題の答えを、はっきりと言葉にして。


「修羅場だろうなあ」

漠然とした不安は消えた代わりに、明白な不安が生まれた。
亮も当然不安だろう、震えるくらいだから恐怖もあるかもしれない。
けれどまるで軽い冗談のような口調で、上階に向かうエレベーターの中で彼は呟いた。