【完結】遺族の強い希望により

手を繋いで家まで歩いた。
ゆっくりと、2人の時間を惜しむように。

それでも22時前にはみのりのマンションの前に到着していた。
みのり1人では到底辿り着けない場所と思えるあの公園は同じ学区内にあり、道が複雑で覚えられないだけで距離にしたらそう遠くない。

マンションのエントランスに設けられた数段の階段を、みのりが先に1段上った。
彼に家まで送ってもらった時、別れるのはいつもその場所だ。
1段上がることで、いつもは見上げる視線がほぼ同じ高さに並ぶ。


手を離すのが怖かった。
家に戻ったらもう二度と会えなくなるような、根拠のない漠然とした不安がみのりの胸を騒がせる。


亮の名を再び母に聞かせることが自分は出来るのかどうか、自信がなかった。
これを機に普通の生活に戻れるのかどうか――そもそも、もう大学にも彼女の籍はない。
それ以前に、帰って、夜寝て、朝になったら全て都合の良い夢だったという落ちはないだろうか。