「みのり……まだ、痛んだりするの?」
小さな仕草に目敏く気が付いた亮が、心配そうに声をかけてくる。
そうではない、と首を振った。
医師がまるで幸運でしたとでも言いたげだったくらい、綺麗な流産だった。
身体に不具合を残すことはなかった。
だから、赤ん坊の痕跡はもうみのりの中には何も残っていない。
そこに確かに命があったことを、誰も知らない。
自分と母親と、医師と立ち会ってくれた看護士しか。
みのりがたった1人で誰にも秘密で、それでも大切に守ろうとした愛しい命が、あの日人知れず潰えたことを誰も知らない。
この身体に傷跡ひとつでも遺してくれたら、その子が存在した、確かな証拠となったのに。
「あ……」
亮の手が、みのりの手に重なった。
重なり合ったまま、みのりの腹をそっと撫でた。
「ないの。何もないの。痛みも傷跡も、何も。でも――、」
「うん。……いたんだな、ここに」
小さな仕草に目敏く気が付いた亮が、心配そうに声をかけてくる。
そうではない、と首を振った。
医師がまるで幸運でしたとでも言いたげだったくらい、綺麗な流産だった。
身体に不具合を残すことはなかった。
だから、赤ん坊の痕跡はもうみのりの中には何も残っていない。
そこに確かに命があったことを、誰も知らない。
自分と母親と、医師と立ち会ってくれた看護士しか。
みのりがたった1人で誰にも秘密で、それでも大切に守ろうとした愛しい命が、あの日人知れず潰えたことを誰も知らない。
この身体に傷跡ひとつでも遺してくれたら、その子が存在した、確かな証拠となったのに。
「あ……」
亮の手が、みのりの手に重なった。
重なり合ったまま、みのりの腹をそっと撫でた。
「ないの。何もないの。痛みも傷跡も、何も。でも――、」
「うん。……いたんだな、ここに」


