【完結】遺族の強い希望により

美和子が言わんとすることを理解したのか、ジェシカは母国語で何かを呟いてからゆるりと立ち上がった。
美和子には聞き取れなかったが、それは神への感謝の言葉だ。

所在なさ気に立ち竦んだままのジェシカに正面の椅子を指して促すと、彼女は今度ははっきりと美和子に対して礼を述べた。

「許したわけではありません」

と、美和子はその謝辞をきっぱり拒絶した後に、もう一度繰り返した。

「座って。熱い内に、コーヒーを。……目が覚めるわ」


琥珀が揺らぐカップに息を吹きかけると、熱い蒸気が上がって来て疲れた目を癒した。
まだ美和子の正面に座ることを躊躇った様子のジェシカへ向け、「ほら」と呼びかける。
もしかしたら微笑みすらしたかもしれなかった。
許さなくて良いのだ、と結論付けてから、不思議なほどに心が凪いでいる。


漸くジェシカも席に着き、2人は会話もなくコーヒーを啜った。