【完結】遺族の強い希望により

2年前に会った時にはまだ波乗りを始めたばかりで、見せる機会がなかった。
上手く乗りこなせるようになった姿を見て欲しい。
ちゃんと見ていてね、と手を振って、クロエは海に出た。

パドリングしながら波を取るタイミングを待つ間、クロエは何度も浜を振り返り、隆司が見守ってくれているのを確認した。
今彼は自分だけのものだ。
隆司の視線を確かめる度に幸せを噛みしめた。


ジェシカもエラもおらず、憎き日本の妻はこの海を遠く遠く越えた遥か彼方――。
日本にいる隆司の家族を思い出したその瞬間、ふ、と心に影が差した。
彼にこちらの家族の方がいかに大事かを自覚させる、これは絶好のチャンスではないか。

折よく大きな波が生まれたのを見つけ、クロエはパドリングのスピードを上げた。
波の勢いは強く、実力で乗りこなせるか否か微妙なところだ。
その前にパーリングするかもしれない。
だが少しくらいの冒険は必要だと思った。