21時00分。
突然視界一面に青が射し、風が吹いたような音を背中に聞いた。
反射的に思わず振り返って、その光景を見た瞬間に全てが飛んだ。

水が踊って、その表面を撫でるように光が包んでいる。
揺らぎの青はやがて無垢に――そして。


「亮……助けて」

希望の光が射した瞬間、涙と一緒に我慢していた言葉が零れた。

――この暗闇から連れ出して。

ずっと言えなかった。
彼をそこへ引きずり降ろしたくなかったから、道連れにはしたくなかったから。
けれど今、光が射した。


そのまま泣き崩れたみのりを、亮の両腕がしっかりと支えた。

「助ける。守る。今度こそ必ず」

約束するように力強く、亮が言った。
それから彼は耳元で囁いた。

「俺がお前を守るから……お前が俺を幸せにして」


みのりにとってそれは、亮の望む幸せが自分と共にあるのだと、初めて信じることが出来た瞬間だった。