時計の分針がひとつ動く。
20時57分を指していた。
玲奈の家を出てから3時間近く、亮と2人でいただろうか。
懐かしい店で一緒に食事をした。
あの頃と同じように並んで歩き、手も繋いだ。
最後にもう一度好きだと言って貰えた。
抱きしめても貰えた。
十分だ、これ以上何を望むと言うのか。
亮の子どもを守るどころか死なせてしまった自分に、再び彼に愛される資格などない。
20時58分。
針が動く瞬間をじっと見ていたからか、それともそれだけその場所が無音だったからか、時を刻む音がやけにはっきりと耳に届いた。
一歩足を引いた瞬間、足に何かが当たって音を立てた。
足元に転がっているのは、亮が最後にくれた優しさだった。
みのりはゆっくりとしゃがんで、角のひしゃげたその缶を拾い上げた。
まだ温もりが残っている、ほんの少しだけ。
――お守り代わりに。これくらい、許されるよね?
ぐずぐずしてしまった。
だが今漸く、立ち去る覚悟が出来た。
20時57分を指していた。
玲奈の家を出てから3時間近く、亮と2人でいただろうか。
懐かしい店で一緒に食事をした。
あの頃と同じように並んで歩き、手も繋いだ。
最後にもう一度好きだと言って貰えた。
抱きしめても貰えた。
十分だ、これ以上何を望むと言うのか。
亮の子どもを守るどころか死なせてしまった自分に、再び彼に愛される資格などない。
20時58分。
針が動く瞬間をじっと見ていたからか、それともそれだけその場所が無音だったからか、時を刻む音がやけにはっきりと耳に届いた。
一歩足を引いた瞬間、足に何かが当たって音を立てた。
足元に転がっているのは、亮が最後にくれた優しさだった。
みのりはゆっくりとしゃがんで、角のひしゃげたその缶を拾い上げた。
まだ温もりが残っている、ほんの少しだけ。
――お守り代わりに。これくらい、許されるよね?
ぐずぐずしてしまった。
だが今漸く、立ち去る覚悟が出来た。


