【完結】遺族の強い希望により

『大袈裟に騒ぎ立てない方がいい。あなたが取り乱せば、お腹の赤ちゃんにそのまま影響を与えますよ。苦しい苦しいって、今頃泣いてますよ』


――お母さんは、味方してくれたのに。勝手に赤ちゃん殺されるって勘違いして、怯えて。


母親も医者も、母体の精神状態が不安定だと胎児に悪影響が出ると言った。
それはみのりを落ち着かせるための発言に他ならない。

けれどそれまでが順調だったが故に、みのりは流産の原因を出血した瞬間と結びつけて考えずにはいられなかった。


『みのり……あんたまさか、妊娠してるの?』

母親が聞いてきた言葉に、目の前が真っ暗になったあの瞬間。


――隠してなどいなければ。初めから母を頼っていたら。

自分を責めずにはいられなかった。

――私のせいで、私が馬鹿だったから、赤ちゃんは。


傷みを忘れる努力など、出来るわけがなかった。
みのりはずっとこのまま、1人であの傷みを、犯した罪を、背負っていくしかない。