【完結】遺族の強い希望により

みのりは玲奈の家で見てきた隆司とジェシカの過去を思った。

隆司は知らなかった、だから玲奈の母と出会えた。
遺影は穏やかに笑っていた。
あの人の半生は確かに幸せだった。

今を乗り越えさえすれば、亮もきっとそうなれる。
余計な傷みを背負うことなく、いずれ自分以外の誰かと新しい恋をする。


では、何も言わずに隆司の子を産んだジェシカはどうだったのか。
彼女は、彼女の子は幸せだったろうか。

亮の子どもを身籠った時、みのりは父親がいなくても幸せになれると信じていた。
ジェシカも同じだったはずだ。
彼女の日記に綴られた自分とよく似た思いには激しく共鳴した。

けれどでは何故、彼女は20年以上も経ってから手紙を寄越したのか――。


自由にならなくてはいけない。
この人も、そしてもしかしたら、自分もなのかもしれない。

今元の鞘に戻ったところで、あの出来事はこの先何十年も自分たちを縛り付ける。