「ごめん、言い直す」
と、亮が姿勢を正した。
さっきまでは揺らいでいた瞳が、真っ直ぐにみのりを見つめる。
みのりは何も言わなかった――言えなかった。
「簡単にやり直せるなんて思ってるわけじゃない。けど、みのりのことが好きなんだ、今でも。どうしようもなく。もう一度……」
抱え込むようにみのりの後ろにまわしていた腕を解き、亮は縮こまっていたみのりの両手を取った。
固く握りしめ、祈るように頭を垂れる。
「もう一度俺と、付き合って欲しい」
――もう、十分だ……。
一番聞きたかった言葉が聞けた、それだけで十分だ。
この人をもう、解放してあげなくてはならない。
あの喪失の痛みを、彼は知らない。
これから一緒に共有していくことは出来るのかもしれない。
けれどそれは、ただ彼を縛り付けるだけの行為だ。
何年、何十年経っても、あの傷みが消えることはないのだから。
と、亮が姿勢を正した。
さっきまでは揺らいでいた瞳が、真っ直ぐにみのりを見つめる。
みのりは何も言わなかった――言えなかった。
「簡単にやり直せるなんて思ってるわけじゃない。けど、みのりのことが好きなんだ、今でも。どうしようもなく。もう一度……」
抱え込むようにみのりの後ろにまわしていた腕を解き、亮は縮こまっていたみのりの両手を取った。
固く握りしめ、祈るように頭を垂れる。
「もう一度俺と、付き合って欲しい」
――もう、十分だ……。
一番聞きたかった言葉が聞けた、それだけで十分だ。
この人をもう、解放してあげなくてはならない。
あの喪失の痛みを、彼は知らない。
これから一緒に共有していくことは出来るのかもしれない。
けれどそれは、ただ彼を縛り付けるだけの行為だ。
何年、何十年経っても、あの傷みが消えることはないのだから。


