【完結】遺族の強い希望により

何故あの時に気付けなかったのか。
先に相手の気持ちを信じられなくなったのはみのりの方だったのに、亮だけが、こんなにも自分を責めている。
胸の苦しさに加えて、キリキリと胃が痛みだした。


「責任取るなんて言うつもりじゃない……俺がそうしたいんだ。俺の知らないところでお前が苦しむのはもう嫌だ」

何も言わないみのりを、不安に揺らぐ彼の瞳がじっと捉えていた。


恐る恐る壊れ物にでも触れるように、亮の右手が上がって彼女の髪を撫でた。
みのりが抵抗しないでいると、きゅっと眉根が寄る。


静かに滑り下りてくる手が耳を掠めた。
みのりの耳がひどく冷えているのに気付いたのだろう、今度はその耳を手のひらで優しく包み込んでくる。

じわりと広がる熱が心地良かった。
寒さではなく彼が震えているのが、鼓膜を通して直に伝わってきていた。