【完結】遺族の強い希望により

「ごめんみのり、1人にしてごめん。試したりなんかしてごめん、信じきれなくてごめん」


ホットレモンの缶が、手の中をすり抜けて滑り落ちた。
石畳に当たって凹んだ鈍い音に続き、ゴロ、ゴロと不規則に転がって止まった。

少しだけ、冷静に戻った。
取り乱しているのは自分だけではなかった。
苦しんでいるのは。
楽になることを、望んでいないのは。


「みのりが不安だった時、話聞いてやれなくてごめん。辛かった時、傍にいてやれなくてごめん。一緒に悩めなくてごめん、一緒に泣けなくてごめん、何も知らなくてごめん。子どもが出来たって分かった時――」

涙を我慢していたのは、自分だけではなかった。


「一緒に喜んでやれなくて、ごめん」