「子ども……駄目だったのか?」
妊娠はした、けれど産んではいない。
亮が知っているのはそこまでだ。
彼は『流れた』という直接的な表現は避け、慎重に言葉を選んだ様子だった。
堕ろしたのか、とは聞いてこなかった。
それがみのりにとっては救いでもあり、そして、鋭い刃でもあった。
「ごめんなさい」
「――なんで、お前が謝る」
「ごめんなさい」
「みのり……?」
手がぶるぶると震え、まだ開けていない缶の中身が揺れて音を立てた。
呼吸が浅く、短くなる。
――駄目、だめだ。しっかりしろ。しっかりしないと。
冷静になれ。
そう言い聞かせるほどに、気が遠のいた。
『しっかりしなさい』と、頭の中に怒鳴るような声が響いていた。
――ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめん……――
「みのり!」
頭の中に響いていた音が、その一瞬で全て止んだ。
何か大きくて暖かいものに包まれていた。
不自然に開けたはずの隙間はゼロになり、気付いた時にはみのりはもう、力強い腕の中に抱きしめられていた。
妊娠はした、けれど産んではいない。
亮が知っているのはそこまでだ。
彼は『流れた』という直接的な表現は避け、慎重に言葉を選んだ様子だった。
堕ろしたのか、とは聞いてこなかった。
それがみのりにとっては救いでもあり、そして、鋭い刃でもあった。
「ごめんなさい」
「――なんで、お前が謝る」
「ごめんなさい」
「みのり……?」
手がぶるぶると震え、まだ開けていない缶の中身が揺れて音を立てた。
呼吸が浅く、短くなる。
――駄目、だめだ。しっかりしろ。しっかりしないと。
冷静になれ。
そう言い聞かせるほどに、気が遠のいた。
『しっかりしなさい』と、頭の中に怒鳴るような声が響いていた。
――ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめん……――
「みのり!」
頭の中に響いていた音が、その一瞬で全て止んだ。
何か大きくて暖かいものに包まれていた。
不自然に開けたはずの隙間はゼロになり、気付いた時にはみのりはもう、力強い腕の中に抱きしめられていた。


