【完結】遺族の強い希望により

「あれ……なんだよ」

と、公園に差し掛かるなり、亮が不満そうに呟いた。
まさかと思ったが、中心部に近づくにつれて見間違いではないことにみのりも気が付く。
ライトアップどころか、噴水の水まで止まっていた。


「去年はクリスマス過ぎてもやってたのに……残念だね」

大学入試が差し迫った頃だったので、間違いない。

遠くの大学を受ける亮とは、彼が合格してしまえば離れ離れになってしまう。
落ちればいいのにと望む嫌な気持ちをねじ伏せて応援しなくてはならなかった。
自分の試験よりも2人の今後の方が気がかりで、春が来るのが怖く、不安に押し潰されそうだった。

水に映って揺らいだ青が、緩やかに変化して無垢な白になる。
それは少しずつ暖かみを帯びて、やがて眩く輝く黄金になった。
迷いも不安も消えて、希望の光が射したようだった。
真っ直ぐな気持ちで互いに「頑張ろうね」と励まし合えたのは、2人並んで一緒にあの光景を見たからに違いなかった。