【完結】遺族の強い希望により

「悪い、外寒いよな。考えてなかった。これ、カイロ代わりな。もうちょっとだけ平気か?」

気遣うように言いながら亮が渡してきたのはホットレモンだった。
彼の手には缶コーヒー。

「もうちょっとだけも何も、まだ話もしてないよ」

ふふ、と小さく笑って返した。

話が始まりさえしなければ終わらずに済むのに、と、さっきからずっと、自分の意思と感情が矛盾していて苦しい。
ホットレモンを受け取って確かに温かいが、これが離れてしまった彼の手の代わりなのかと考えると、途端に要らないもののように思えてくるからたまらなかった。


「ちょっと、座って話そう。もう着くよ。みのり、ここどの辺だか分かってる?」

「……噴水がある公園の、近く……?」

もう着く、と聞いて、期待を込めてそう言った。
亮が選んだ目的地があの公園だったら嬉しい。