【完結】遺族の強い希望により

イルミネーションと呼べるほどの煌びやかな電飾もないし、クリスマスの時期には競って家を飾る区画が近くにあるので地元でもほとんど話題にすら上がらない。
この近くに住むクラスメイトがたまたまその話を教えてくれて、去年、亮と2人で訪れたのだ。

湧きあがる水に反射する光の色が緩やかに変わっていくのがとても幻想的だった。

――あそこだったらいいな。とても綺麗だった。


「お前の手、冷たい」

不意に亮が呟き、繋いでいた手がぱっと放された。
突然現実に引き戻されたみのりは突き放されたようなショックを受けたが、亮は見つけた自動販売機にコインを投入しているところだった。

ガコン、と2つ目の商品が落ちてくる音が聞こえると少しだけ安堵した。
亮は自分の分だけでもみのりの分だけでもなく、2人分の飲み物を買ったようだ。
みのりにとっては、少なくともそれを飲み終わるまでは一緒にいられるという意味だった。