【完結】遺族の強い希望により

生活圏内のはずなのに、普段は通る機会のない住宅街だったのでみのりは方向を見失いそうになっていた。

任せておけば大丈夫、と思っていても、住所表記を見ると知らず地名を確認している。
角を曲がったところが境目だったのか、また地名が変わった。

――ここって、確か……。


去年の冬に一度だけ2人で訪れたことのある公園がある地区だった。
公園とは名ばかりで特に遊具があるわけでもなく、元は建物を造ることの出来ないただのデッドスペースだったらしい。

細長い敷地の中心には小さいながらも噴水があり、左右には等間隔にベンチが並んでいる。
普段は小さな子どもを連れた近所の母親たちの憩いの場だったり、犬の散歩コースの一部だったりする以外には、近隣住民の抜け道でしかない。
だが、冬の間は噴水の周りがライトアップされているはずだった。