【完結】遺族の強い希望により

今日、たった今この時間が、みのりにとって亮との間に許された最後の特別な時だった。
この後別れる時が本当の2人の決別の時で、今度こそ、もう二度と2人きりで会うこともなくなるのだろう。

自分もいい加減前に進み出さなければならない。
いつまでも家に籠って、闇の中で立ち止まっているわけにはいかない。

これから起こることはきちんと終わりにするためのけじめで、動き出すためのきっかけだ。


――これが、最後なら……。

最後だから。
今だけだから。
もう一度だけ、短い間だけ、あの頃の幸せに浸ってもいいじゃないか。


「……手。繋いでも、いいか」

「変なの。この店来る時だって許可なんか取ってなかったクセに」

亮がそうしたいと思うのが、ただの情や懐かしさなのかみのりに対する贖罪なのか、それ以外の何かなのかは分からない。
互いの存在を確かめ合うかのように指先が絡み合った。

彼のことが好きだという気持ちは、今も変わらずにみのりの中にある。
それが指先から漏れ出て亮へ伝わってしまわないことを、彼女は心の底から祈っていた。