【完結】遺族の強い希望により

わざと冗談めかして軽口を叩いている内に、亮がやっと笑ったのを見てみのりはほっとした。


自分に一度も手を上げたことがなかった彼が玲奈をぶった時、彼女は確かに小さな嫉妬を覚えていた。
みのりが口にした『ありがとう』からはその意味までは汲み取られなかっただろうが、遠慮なく本気でぶつかられたことを嬉しいと感じたのもまた本心だった。


掴んだままの亮の手を放すタイミングが分からなかった。
繋いでいるわけでもなく、一方的に手首を握っている。
本当はそのまま触れていたいという気持ちが邪魔をしていることには気付いていた。

――でも、放さないと。


そっと彼の手を解放し、所在のなくなった自分の手はコートのポケットに隠そうとした。
触れていた温もりが消えた途端に、指先が酷く冷える。