どくん、と、不整脈のような大きな拍動がひとつ、みのりの胸を叩いた。
相手が何をどこまで知った上で話しているのかが分からないのが怖い。

また激しい動悸が始まるかと思ったが、大きな一発の後は心臓が止まってしまったのではないかと思うくらいに静かだった。


――戻れないのよ、みのり。もう戻ってこないの。

亮がこの後何を言っても、流されてはいけない。
失ったものの大きさは、決して忘れられるものではないのだから。


「お前が話す気にならないのは、きっと俺が話さないからだよな。俺たち、大事なこと何にも話し合って来なかったんだな」

聞いてはいけない、決して耳を傾けてはいけない。
そう思っているのに、耳を塞ぐことも立ち去ることも出来なかった。
期待などしてはいけないのに。


「一方的に別れるなんて言い出しておいて――、本当は俺、お前から連絡が来るの待ってた。遠距離でも大丈夫だって、別れたくないって言わせたかった。あの時俺、お前を試したんだよ」