【完結】遺族の強い希望により

――自分から誘ったくせに。

亮は早く帰りたがっているのだろうか。
だから急いでいるんだろうか。
誘われた時にはゆっくり話したいという意味のことを言われたような気がするが、その気が変わるくらい、自分は一緒にいてつまらない女だったろうか。

そんなことを考えながら、いつの間にか湯気も立たなくなった冷めたパスタを機械的に口に運び続ける。

久しぶりの店で頼んだ懐かしいメニューは、最初は美味しいと思っていたはずなのに、今は味も感じられない。
伸びきったゴムのようだった。
みのりはほとんど咀嚼もせずに、口に入れたものを次々と飲み込んだ。

――急がないと。

憑りつかれたようにそう焦っていた。
亮が急いでいるようだから、待たせてはいけない。
彼が戻ってくる前に食べ終わらなければ。

つまらない女で済むのならまだ良いが、迷惑な女にはなりたくなかった。