【完結】遺族の強い希望により

階下に降りていくと、キッチンに繋がるドアが開けられたからだろう、ふわりと漂ったのは鰹の出汁の香りだった。
先ほど隆司の手紙を読みながら脳裏に浮かんだ食卓のイメージが、また少し現実味を増して色付いた。


夕食の支度をしていたらしい玲奈の母親が心配そうな顔を覗かせている。
声をかけたいが、何と言うべきか迷っている様子だった。


「……もう、お帰り? 夕食、一緒にどうかと思ったのだけど」

と、結局彼女は、一番言いたいこと、聞きたいことを避けることにしたようだ。
食事の誘いを、みのりと亮は丁寧に断った。
既に準備してくれているのならそれもどうかと思ったが、どうやら何人分作るべきかで迷っていたところらしかった。