何故このままではいけないのか。
誰のために諦めようとしているのか、それは本当に相手のためになることか。


距離を忘れさせる頻度で送られてくる手紙が決心を遅らせ、鈍らせた。
ずるずると手紙だけの関係を続けている内に、少女は自分の身体の変化に漸く気付いた。


奇跡は起こったのだ。
腹に手を当てる。
まだ何の変化も見られないそこに、けれど確かに宿った命を少女は確信した。


愛と夢ばかり見ていた少女はこの瞬間、母親になった。

母は強い。
恐れていたことが、全く怖くなくなった。