【完結】遺族の強い希望により

英語圏のネイティブらしく書き連ねられた文字は、下手というわけでも雑というわけでもないが、外国人独特のクセと崩し方が見える。
日本人が書いたアルファベットよりもみのりにとっては読みづらく、ただでさえ苦手な英字に重ねて拒否反応を起こさせた。


「こっちのノートの続きを、先に……」

と言いかけた玲奈も、ジェシカの日記が英語なのに気付く。


「亮、1人でこっち読んでて」

「は? 俺?」

「私、やっぱちょっと見たくないし。訳して、重要なとこだけ後で教えてよ」

「え……やだよ、女子の日記なんか1人で読ませんなよ」


父の昔の恋人の日記を見たくないという玲奈の気持ちも、こういう事情であれ異性の日記に目を通すことに抵抗を感じる亮の気持ちも分かるが、みのりはそのやり取りを黙って見守るしかなかった。