でも……演技も簡単なことじゃない。


苦しい気持ちを押し殺して笑顔を見せる。


何をする気も起きない中、そうやって親には自分の意思を隠さなければいけない。


より体力を使ってしまう。







ごはんは進まず、喉も通らなかった。


「……ごちそうさま。」


私は箸をお茶椀の上に乗せて席を立ちあがった。


「え、もういらないの?」


お母さんが驚いたように言う。


「うん、寝起きだからかわかんないけどあんま食欲ないや。お父さん残り食べちゃってよ。」


笑顔を作ってお父さんに冗談っぽくそう言った。


「全然食べてないじゃない。」


お母さんは私の残したおかずを見る。


「今日友達からもらったお菓子いっぱい食べちゃったからかな?」


「そうなの?ラップして置いとこうか?」


「ううん、大丈夫。」


私はそう言い残してリビングを出ていこうとした。


「ちゃんと食べないと、健康に悪いんだぞ?お母さんもせっかく作ってくれてるんだから、次からはお菓子控えるようにしなさい。」


お父さんは私を引き止めるかのように言った。


「うん、気をつけるよ」


と私はまた笑顔を見せて、リビングを出た。