トイレに行って体操着に着替え、また教室に戻った。


ひとりだけ違う服でよけいに浮いてしまう。


自分の席に行き、落書きされている机を消しゴムで消そうとした。


でもなかなか消えない。


その姿を見てくすくすとみんな笑う。


 どうして……私が!


涙をこらえて消しゴムに力を込めた。


ホームルームが始まる時間になると先生はきっちり教室にやってくる。


私は机を教科書などで隠し、先生にバレないようにした。


だって、見つかったらややこしいことになる。


これ以上ややこしい状況になるのは嫌だ。


「内宮、おまえ制服はどうした。」


先生は、やはり私に目をつける。


そりゃあ、目立つに決まってる。


私は必死にごまかそうとした。


「あ、えと……学校来る途中に……水まいてる人に……間違ってかけられて……。」


「そうなのか、風邪ひかないようにしろよ~。」


少し、迷った。


先生に言ったらなんとかしてくれるかもしれない。


先生に言ったらこの状況から抜け出せるかもしれない。


なんて思ってしまう自分がいるんだ。


だから、本当のことを言ったら……って思うけど、なんとかしてくれる保証なんてどこにもない。


変に行動を起こして今の状況が悪化してしまったら、今より最悪なことになる。


変な「期待」が頭の中でちらつく。


だけど私に、行動を起こせる自信なんてない。


起こしたところで何も変わらなかったら意味がない。


何も……変わるわけない。