内容は興味深かったけど、弥宵先生なんで私に話してくれたんだろ…?

なんて考えながら班当番であった放課後の教室掃除をやっていると、



「あたしら机やったからいいでしょ〜?あたしら優しい〜」

「もう十分だよなぁ!俺ら用事あんだ〜」

「じゃあ黒板とゴミよろしく〜」



と言い、私の返事も聞かずに、矢継ぎ早に言うとさっさと帰ってしまった。
班は不幸なことに文槻と一緒…弥宵先生見てる間はいいけど、あの先生途中からいなくなって、そこから今みたくなる。
だから掃除当番嫌いなんだよね…


弥宵先生の話は後々考えることにして、1人で黒板と黒板消しを綺麗にすると、ゴミを捨てに教室をでた。

場所は1階の中庭にあるゴミ捨て場。2年生の教室は3階…イイウンドウダネ。
…早く行って反省文渡して帰ろ…









中庭に着くとゴミを捨て、戻ろうと振り返るとその時後ろから私の名を呼ぶ声がした。



「あおちゃ〜ん」



この学校で私の名前、“蒼葉”をあだ名で呼ぶのは1人しかいない。



「…井崎(いざき)さん…!」



【井崎共永(ともなが)】

彼はここの用務員。去年この学校にやってきた、ほんわかしてて生徒にも、私にも優しい癒し系おじさん。私のグチも嫌な顔せず聞いてくれるとっても良い人。

井崎さんと私が何故こうも仲良くしているのには、あるものがキッカケである。
そのあるものとは



「前にあおちゃんが花壇に植えた花が、もう咲いてたよ…!」

「え…ほ、ホントに!!?」



“花”だ。


入学してすぐの時。この性格のせいかクラスに馴染めず、またその頃から文槻にいじめの対象にされていた。

毎日嫌で嫌でしょうがなかった。


そんな中出会ったのが、
“中庭にある花壇”
だった。


色も種類も様々な花が、色鮮やかに咲き誇っている…


私は見惚れていた。

ちょうどその時声をかけてきてくれたのが、用務員の井崎さんだった。彼は

『花が好きなの?』

と声をかけてくれ、話しているうちに仲良くなった。そして2年生になり、進級のお祝いにと花壇の一部を私専用の花壇として開けてくれたのだ。

その花壇に植えた種がやっと咲いた。



「ゴミ箱教室に戻しておいで。花壇で待ってるから」

「うん!!すぐ向かうから!!」



私は早く見たくて、早く花に会いたくて教室への階段を駆け上がった。