「お、おまっ!!べろちゅーで気絶って!!テクニックどんだけ!!あははは!!!!いっそ襲っちゃえばよかったのに!!」

「襲う…!?
……無理。気持ち悪……あの後、初めて…石鹸で口ゆすいだ………あー…今思いだしても、気持ち悪…」

「ぶっ!!どんだけ嫌だったんだよっ!!」

「…っ…………夜兄も、知るがいいさ………あの化粧と香水の…入り混じった匂いと……気持ち悪い…猫なで声…」

「いやいや、もう知ってますし。お前より経験豊富だし。
…いやぁ〜しかし、面白かったぁ〜」

「人ごと……」






“あ、そういや”
となにか思いだしたのか夜は、体を捻らせ依の方を向いた。依は返事もせず黙々と明日の準備をし始めようとしている。



「その話で思いだしたんだけどさぁ。この事件の犯人である夢月蒼葉…だっけ?
依は彼女を職員室に呼んだじゃん?」

「……それが……?」

「いや、学校は何校か行ったことあるけど、この学校来て初めてじゃない?



…依が自分から呼びだしたの…」

「……!」



ここでようやく依の動きが止まった。

そしてゆっくり夜の方を向く。夜はいつも通りニコニコと笑みを浮かべていた。
その顔に少し訝しげな顔をする。



「……知ってたんだ……
でも…初めてじゃな…」

「今までは呼んできてって俺が頼んだものでしょ?」

「……そ…だけど…
……よ、夜兄……なに言いたい、の…」

「いんやぁ〜別にぃ〜?
ただ、他人に一切興味持たなかったかわいい弟がまさかなって思ってねぇ」

「………別に…興味はない……




……ただ…ただ、苦しそうな表情が…
気になった、だけ……」

「……っふふ。そう」



夜は一瞬キョトンとした顔をみせてからいつもの笑みに戻りクスクスと笑った。

依は突然笑い出した兄に首を傾げながらも、明日の準備を終え、今度は洗濯を始めた。



「(苦しそうな表情をする彼女を気になったってことは、
“彼女に興味を持った”
ってことに気づいてないんだから。全くこの弟は…)」