人生で初めて、付き合いたいって思うほどに女の子を好きになって、ようやく一緒に帰るなんてことが出来て、しかも携帯アドレスの交換なんて個人的なことをしたせいで、俺は勿論浮かれまくっていた。
だって仕方ないでしょ、スポーツや勉強なんかでは味わえない達成感というか、この幸福感。ああ、って納得した気分だった。悔しさとか誰かに勝ったとかの優越感じゃない。ただ嬉しいというか、自分が自分でよかったという感じだった。
恋愛って辛いとか苦しいとか、確かに色々いうけどさ、こんな気持ちが味わえるから、皆するんだよなって。
誰かを好きになってうまくいかなくて、もう人なんて好きにならないって歌も世の中にはたくさんあるけれど、でもやっぱりまた誰かを好きになるんだろう。だから恋愛小説も歌も映画もなくならないんだろう。
自分の思いが満たされるとき、それは本当に、ジタバタしたいほどの幸福感だった。
その日の深夜、手に入れたばかりの佐伯のメールアドレスに向けて、俺はもう一度頑張りを発揮する。
付き合ってくれる?って、送ったのだ。
ベッドの中で、毛布の中に全身をいれた状態で。
時間が時間だから返信は期待してなかった。
もしかしたらスルーされる可能性だってあるわけだしなって、ずっと自分に言い聞かせていた夜の間中。お守りみたいに携帯電話を握り締めて、二段ベッドの上の階でただ転がっていた。
だって彼女の気持ちは聞いてないままだ。
俺に誘われて、断れなくて一緒に帰ってくれただけかもしれない。どうせ電車も一緒だしいいか、って佐伯は考えてたかもしれない。



