え?って横から聞こえた。どうやら俺が見ているとは思ってなかったらしく、佐伯の驚いた声だった。
「えっと・・・その、夕日が・・・」
「うん。そんな話したの俺だから、来てるかなーって見上げてたんだ。そしたら結構な確率でいるからさ、寒くないのかなって思ってた」
俺の言葉にもごもごと小さく返事をする。彼女がどんな表情なのかがわからないけど、自分でもいっぱいいっぱいでそっちなんて見れない。
「・・・さ、寒いのは大丈夫、だった、けど」
「ここで何みてんだ?長い時間、いつも」
「えっ!?いやあ、あの・・・だから、空とか」
うん、知ってるけど。でももしかしたら・・・たまには中庭も見下ろしてくれてたかも、って思ってつい聞いてしまったのだ。バカか俺は。そらそーですよね、見てませんよね、俺のことなんてね。
勝手に撃沈していると、彼女はワタワタと説明しだした。どうやら俺が、こんな寒いところにいるヤツは変人だぜ的なことを言ったと思ったのかもしれない。
「ら、来年のね、絵画展にはね、そのー、夕焼け空をって」
「ああ、そうか」
頷いた。佐伯、美術部だもんなー・・・。
真っ直ぐ前、フェンスの向こう側。ビルや家々が立ち並ぶ山すその小さな町の向こう側から、キラキラとピンク色の光の帯が出だした。
つい呟いた。
「夕日になるな」
フェンスを掴んだ佐伯が、前を向いたのがわかった。



