「さあな。ま、何とかなるって。下に逃げたら部活行かなきゃだし、上だって思ったけど、屋上は正解だったなー」
初めから屋上を目指していたわけじゃなくて、たまたま目についた階段を上がったら屋上に直通だっただけだ。
でもそれは、かなりいい結果をもたらした。
明日にはきっと俺は寺坂と飯森さんにボコボコにされるだろうけど。でもそんなこと、どうでもいい、そう思えるような光景が、俺の目の前に広がっていたのだ。
「え?」
聞き返してきた佐伯はまだ気がついていないらしい。
だから俺は、指をさした。素晴らしいこの光景を、見て欲しくて。
彼女が振り返る。
それから―――――――――ぴたりと、体の動きを停めた。
そこには眼下に広がる街の光景と、様々な色が重なって交じり合う夕方の空があったのだ。
ピンク色やらオレンジ色やら濃い青色やら。
俺が知らない色の名前がたくさん、たくさんそこに散らばっていた。
大きな雲がいたるところにあって、その端から今日最後の力を振り絞る太陽が輝いている。
「わあ・・・」
彼女が体を起こして空へと向き直った。
俺はじわじわと迫り来る感動に浸りながら、つい声に出して言った。
「すげーよな、ここからの眺めはマジで」
感動ついでに彼女の隣へと進む。ぼーっと光景を眺めながら、佐伯が小さく頷くのが判った。



