え、残って練習ってマジで?それってめちゃくちゃ嫌なんだけど!
俺がそう思っている間にも着々と物事は進んでいって、どうやらそれは決定事項になったみたいだった。ええーだ、ええ~・・・。ちらりと周囲を見回すと、既に音楽室にはピアノ前の竹崎さん、それから飯森さんと寺坂と俺だけになっていた。
・・・あ、佐伯、帰っちゃった?
うわー、嘘だろ、何だよこの修行!そんなんだったら俺が勿論部活に行きたい!
どうやら竹崎さんがお気に入りらしい寺坂はすっかり残る気でいるけれど、俺はそんなのご免状態だった。
ペロリと唇を舐めてチャンスを伺う。決めた。・・・とっとと逃げてやる。
「さ、やるわよ~。じゃあ初めからね」
竹崎さん、お願い。と飯森さんが彼女を見、頷いた竹崎さんがゆっくりと伴奏を始める。寺坂と飯森さんがピアノに注目した。
今だ。
俺は拳を握り締めて――――――――――少しだけ空いているドア目掛けて突進した。
「え、よ、横内!?」
「ちょっと!」
寺坂と飯森さんが叫ぶ。俺はそれを背中に聞きながら派手な音をたてて廊下へ飛び出した。そして。
人気のいない長い廊下の途中、佐伯の後姿を見つけたのだ。
わお!まだいた!
何も考えずに走った。
あの背中を目指して。
俺が走る音に気がついたらしい彼女が振り返った。そして、目を丸くする。



