「うん。ありがとう」
俺はそう言ってバッグの中を漁る。もう早くスポーツ飲料水を飲まないと干からびそうだ。
「相手のコンディションが悪いのもあった、ラッキーだったんだ」
喉をならしてスポーツドリンクを飲んでからそう言うと、幸田は真面目な顔で首を振った。
「いや、お前の方が上手かったんだよ。運も実力のうちっていうし、コンディションはどんな小さな試合であっても整えとくのが大事なんだろ」
シングルスの3番目、俺の試合は勝つことが出来た。だけど、ギリギリで。掛け持ちだってのにこの様ではヤバイかもと自分で思うほどに足が重くなっていた。
かなり振り回されたのだ。コートの中を右に左に。だけど幸田と組んだ毎日のトレーニングで鍛えていた反射神経と瞬発力がきいて、何とか勝つことが出来た。
幸田はごしごしとタオルで顔を乱暴に拭く。やつは、惜しくも負けてしまったのだ。太陽の光も風の影響も勿論あった、だけど大きかったのは相手のサーブだ。どうしてこんな高校にいるんだ?って思うほどの重いサーブを受けきれず、サービスを取られてしまったらしい。
幸田は何も言わないけれど、いつもの笑みが消えている。うちの部のエースである自覚がある幸田には、今回の試合結果は相当こたえたはずだと判っていた。
「ダブルスが鍵だな」
ぼそりと幸田がそう呟いた。
俺は声は出さずに頷く。
仁史先輩も勝ちを手にしていた。だから、あとはダブルスの結果で全てが決まる―――――――――



