学校に集合してから、全員で軽くアップする。ラリーで腕をならし、走りで体を温めて、高まりすぎる緊張感を散らすのだ。会話も少なく靴紐を結びなおして、用意されたバスに乗った。
隣町の高校のテニスコートが解放されるって話なのだ。
顧問同士がテニス友達で、少なくとも6年間は恒例行事になっている男子硬式テニス部対校試合。どちらも全国レベルには程遠いし、だけど水泳部の上田先生が言うほどには弱小クラブってわけでもないのだ。
実力はその年の部員の腕に左右されるが、大体ほぼ同じくらい。
公式の試合成績も同じくらい。
毎年年末に行われる国民的テレビ、紅白歌合戦のように、両クラブにとっては大事な恒例試合なのだ。去年はうちが勝った。俺はまだ1年で試合にも出れないほどの腕だったけど、仁史先輩や他のレギュラー陣がガッツポーズを何度もして喜んでいた光景を覚えている。団体戦でダブルスを一つしか落とさなかったのだ。
俺も来年はあの中にいたい、そう思ってきたんだ。
そして今年は試合に出れる。俺も、ちゃんと一員として。
ようやく口元に笑みが浮かんできた。
負けず嫌いを遺憾なく発揮する、その瞬間が近づいてきつつあった。
「ウィッチ」
くるくるとラケットが回る。
それが倒れてスポーツブランドのロゴが見えたらサーブかレシーブかの選択だ。
整列して並んだとき、先生方はお互いにニコニコと笑って握手をしていた。去年はそんなこと見てなかったけど、今回はよく観察したら先生も嬉しそうな顔をしていた。対校試合だ、だけどそれはあくまでも俺達だけのこと。顧問にとっては旧友との楽しい時間なわけだ。



