思惑があったのだった。
例えば俺がこのクソ寒いのにマフラーなんかの防寒具を持っていなかったのは、そうすれば佐伯が心配してカイロや手袋やを貸してくれるから。
ついでに近寄れるし、ついでにドキドキも出来る。
だからクラブの時のジャージの上にコートだけを羽織った姿で屋上に行ったわけなんだけど・・・・フライングだったみたいだ。
「・・・いないし」
屋上には、誰の姿もなかったのだ。
がっかり。まさしくそんな状態で俺は寒さに首をすくめる。あの子のことだからお弁当を食べたら絶対来ると思ったんだけどな~・・・。でもメールにも書いてなかったし、今日はもしかしたら美術部で部室の掃除とかもあるのかも。それで出れないのかも。
そういうこともあるよな。俺は仕方ないな、と両手をポケットに突っ込んで、屋上を見回した。
風がびゅうびゅうと音を立てて吹いていく。見上げる空は今日も高くてきっぱりと青く、きっとまた綺麗で強烈な夕焼けが見れるんだろうなあ、という色だった。この世の終わりみたいな、ダイナミックな光景が。
・・・廊下で佐伯とぶつかって・・・。
口元に出来た傷もとっくに消えている。俺はその女子を気にするようになって、なんと今では彼女になっている。彼女だって、うわ~だよマジで。
寒さで我慢できなくなるまでは屋上にいようって思っていた。どうせまたすぐに部活が始まるし、体を動かせば半袖でも十分な熱を持つ。部室へいけばストーブもあるし、大体ここ数年間風邪なんて引いたことがなかった俺は、変な自信も持っている。
もしかしたら、佐伯が来るかもしれないし―――――――――――



