「ごめんなさい。急に用事が出来たから、これから行かなくちゃ。今日はもうゆっくり休むのよ」
「…….はい」
お母様に部屋まで送ってもらい、挨拶が済んだ後、すぐさま屋敷からお母様の気配が消えた。
今日こそ…そばにいてほしかった。
でも…そんな我儘は言えないよ。
そう思っていると、今日買ったパンが目に入る。
そういえば、パンがあったんだ。
さっきの頭痛のせいで、すっかり忘れていた。
早く食べなきゃ。
袋の中からパンを取り出して、一口頬張るとあれ…?と口の動きを止めてしまう。
何だか…初めて食べた気がしない。
….…っていうか、この味を知っている?
なんで…?
私、パン自体食べたことなかったはず、なのに…
どうして…?
『あの時の娘さんじゃないか』
「!」
そういえば…さっきのパン屋のおじさん…私のこと…知っているようだった。
前にクリームパンをあげたって…
でも、私にそんな記憶はない。
それに…今日初めてあの街に行った…
でも…あのおじさんが間違っていなかったら…?
本当に私のこと知っていたとしたら…?


