「…ふーん」
男は少し考えたかと思ったら、懐からナイフを取り出し、袖を捲り自分の腕に傷つける。
「…っ」
「これでも、欲しくない?」
ポタポタ…と床に流れ落ちていく赤い液体。
私はそれに目を背ける。
すると唇に何か触れたと思いきや、突然すぐそこに血の匂いがする。
この男…っ
自分の血を私の唇に付けたのだ。
「…っ…は…」
「やっぱり、本能は血が欲しくて堪らないみたいだよ?瞳がヴァンパイア特有の紅で染まってるし」
「…っ、いらない…」
いらない。
血なんて欲しくない。
……欲しくないのに、体は血が欲しくて堪らない。
嫌だ、いらない。
欲しくない…っ
こんなに苦しまないといけないなら、あの時に死んだ方がマシだった。


