「恋って、認めて。先生」


 点滴を打ってもらったおかげか、部屋着に着替えてすぐ、すんなり眠ることができた。目を覚ましたら昼を過ぎていたし食欲も戻っていたので、純菜が置いておいてくれたカレーを温めて食べ、薬を飲んだ。

 純菜と琉生にお礼のラインメッセージを送り、横になる。私は無意識のうちに何度もスマホの画面を見つめていた。比奈守君からの連絡が全くない。

 いつも交わしているおはようの一言すら入ってこなかった。昨夜一方的にバイバイしておいてこんなことを思うのは間違っているかもしれないけど、それでも私は、比奈守君からの連絡が来るのを心のどこかで強く期待していた。

 何があっても好きでいてほしい。年齢なんて関係ないって言い切ってほしい。私が比奈守君を受け入れられるその時まで、何度でもキスして抱きしめてほしい。


 一人でいると、色々考えて思いつめてしまう。気分転換のためテレビをつけると、ドラマの再放送がやっていた。大学時代に流行っていた恋愛ドラマ。しかも、教師と生徒の恋愛を描いたもの。

 このドラマの主人公は女子高生で相手は男の先生。比奈守君とは真逆のパターンだけど、そのキャラクター設定に共感を覚えてしまい、気付くと真剣に見入っていた。

 リアルタイムで放送されていた当時は、友達から話を聞く程度で自分では視聴していなかったけど、時間を忘れて見てしまう面白いドラマだった。今やっているのは、ちょうど最終回らしい。

 保護者や学校関係者に交際がバレてしまったものの、男性教師は女子生徒との純愛を貫き、二人は結婚をした。ハッピーエンドに、胸が躍る。

「私も、本当なら比奈守君とこうなりたいな」

 ドラマを見終え、いちばんはじめに漏れた言葉がそれだった。ブンブン首を振り、私は一人つぶやく。

「ドラマはドラマ!現実は現実!」

 夢のないセリフに、自分で自分が悲しくなる。

「寝よ……!そしたら何も考えなくて済む!」

 自分に言い聞かせるかのように、大きな独り言。頭まで毛布をかぶり、浅い呼吸を繰り返した。

 比奈守君とのキスの感触や、その時感じた胸の音。比奈守君の匂い。熱い指先。くれた言葉。雨の匂い。冷たい風。

「全然寝れないっ……!」

 さっきのドラマは、終盤に濡れ場があった。失恋して以来、恋愛もののドラマやマンガなど一切目に入れていなかった私にそれは刺激物でしかなかった。比奈守君のことばかり考え眠れないのはそのせいだっ……!面白い物語だったけど、私には劇薬なんだっ!

 油断すると比奈守君のことを想ってしまう自分にアレコレ言い訳し、再び目をつむる。薬が効いてきたのか、今度は眠れた。


 数時間後、インターホンの音で目を覚ました。誰だろう?

 純菜と琉生は、いつも純菜の持つ合鍵で入ってくるのでわざわざインターホンは使わない。18時を少し過ぎてる。宅配便かセールスかな?

 出るのも面倒だしこんな格好だし、相手には悪いけど居留守を使おう。そう思っていたら、ドアの向こうで声がした。

「大城先生。大丈夫?ちゃんと食べてる?」
「その声は……。永田先生!?」

 ドキッとした。たしかに風邪だと伝えてはいたけど、家まで来られるとは思わなかった。