「恋って、認めて。先生」



 翌日、私は学校を休んだ。ズル休みではない。風邪を引いてしまったのだ。


 あの後私は、抱きしめてくる比奈守君の胸を強く押し返し、

「琉生達と約束してるからもう帰る!バイバイ!」

 そう言い残し、アパートに逃げ帰ってきたのだ。


 あの後雨はやんだけど、アパートに着いた頃私の全身はびしょ濡れで、私の帰りを待っていた琉生と純菜を驚かせてしまうことになった。

「一体どうしたよ!呼んでくれれば迎えに行ったのに」
「ありがとう、琉生。大丈夫だよ」
「とりあえずシャワー浴びてきなよ。飛星(あすな)が出てくるまで待ってるから」

 今日は私の帰りが遅かったので、純菜が宅配カレーを注文しておいてくれたらしい。カレーは大好きだけど、香りを感じても気分的に食欲が湧かず、シャワーを浴びてすぐ、私は死んだように眠ってしまった。精神的にものすごく疲れていたんだと思う。

 朝になり目が覚めると、机の上に二人からの書き置きが残されていた。

《カレーは冷蔵庫の中だよ。あっためて食べてね。また夜顔出すよ。純菜&琉生より。》

 そっか。あれから二人は帰ったんだな。全然話せなくて申し訳ないことをした。


 カレーを温めるべく重い体を起こすとめまいがした。狭い部屋のはずなのにやけに広く見える。喉も痛い。これは風邪だ……。

 フラつく体でスマホを手にし学校に連絡すると、電話には永田先生が出た。何か言われやしないかと警戒してしまったけど、大丈夫。学校の電話口で比奈守君の話などしないだろう。私は平静を保ち、

「おはようございます。大城です。今日1日休ませて頂きたくて連絡しました」
『おはよう。大丈夫?もしかして風邪?声が違う』
「はい。熱もあるみたいで……。生徒にうつしても大変ですし、お休みを頂けたらと思うんですが大丈夫でしょうか?」
『問題ないと思うよ。三者面談は終わったし、体育祭の練習も、もう生徒達だけでできるだろうから。校長先生達にも伝えておくよ。お大事に』
「ありがとうございます」

 電話を切るとベッドに寝そべり、大きく息をついた。


 永田先生に告白された時、もしも彼を好きになれていたら、私はこんなにも自分の年齢をコンプレックスに思うことはなかったかな?永田先生は年上だし、色々あったけど私よりずっと大人だ。仕事もしっかりこなしてるし、告白されるまでは人として尊敬できる部分もたくさんあった。

 比奈守君とのキスに連なる昨夜の出来事を頭から追い出すみたいに永田先生のことを考えている。これって現実逃避だよね。


 いつもは学校に行っているはずの時間。一人でいると比奈守君とのやり取りが頭をめぐりマイナス思考に陥りそうだったので、着替えて近所の個人病院に行った。早く治すため点滴を打ってもらい、数日分の薬をもらって帰ってきた。