「恋って、認めて。先生」


「違うんです!そんなこと思ってません!私は……!」

 止める隙もなく、永田先生は比奈守君に詰め寄った。

「大城先生はホントに優しいね。ひどいこと言われたばかりなのに君をかばうなんて」
「アンタには関係ないでしょ?口出ししないでくれます?」

 比奈守君は敵意をあらわに永田先生をにらみつけた。だけど、そんなことでひるむほど、永田先生も弱くなかった。

「関係あるよ。好きな人が悲しんでたら助けたい。君もそうでしょ?あ、違うか。比奈守君は自分の思うように動いてくれる彼女が好きなだけなんだもんな」
「は……?」

 比奈守君が本気で怒っているのが、手に取るように分かる。

「二人ともやめて下さい!ここは道端ですし、もう夜なので」

 止める私の言葉を聞かず、二人はそのまま言い合いを続けた。

「アンタ外野でしょ?俺達の問題に首突っ込まないでほしいんだけど」
「先生に対してその態度は良くないね〜。反抗期か?」

 わざと子供扱いする風な口をきく永田先生に、比奈守君の苛立ちは増している。

「大人ってだけで上から物言うのやめてほしいんだけど」
「それなりに経験積んでるから、君よりは賢いと思うよ。それに、本当のことを言ってあげてるんだから素直にそれを受け止めて直す努力をしたら?」

 永田先生は落ち着いた口調で言った。

「君にも友達がいるように、大城先生にだって人付き合いがある。彼氏だからって、そういうの全部報告しなきゃダメなわけ?今日大城先生が僕とここにいるのだって偶然の流れなんだ。君に隠れてコソコソ会ってたわけじゃない。それなのに、自分が不安だからって大城先生の話を聞こうともせず、勝手に勘違いして感情的に責めて、ひどいんじゃない?大城先生がかわいそうだ」
「……!」

 永田先生の言葉に納得したのか、比奈守君はそれきり黙ってしまう。

「なんて、僕もこういうところがまだまだ子供だよな。久しぶりに人を言い負かしたくなった」
「……」
「誤解してるみたいだから最後にひとつ言わせてもらうけど、好きだからって同じ職場の女性に手出すほど僕はがっついてないよ。大城先生は隙だらけだから君が心配になるのも分からないでもないけど、手すらつないでないよ。昔だったらどうだったか分からないけど、今はもういい大人だし、これでも人並みに幸せになりたいって思ってるから。大城先生に八つ当たりするのだけはやめてよね。じゃあ、僕は予定通り帰るよ」

 言いたいことを言ってスッキリしたのか、永田先生は爽やかな笑顔を残して帰っていった。