「恋って、認めて。先生」


「どうしよっかなー」

 しばらく考え、永田先生は言った。

「カラオケはもういいや。駅近いよね?電車で帰るよ」
「え、でも……!」

 私はアミさんの言葉を思い出した。

 アミさんは今日永田先生に告白すると言っていた。たとえいま他のメンバーだけで盛り上がっているのだとしても、そこに永田先生がいなかったら、アミさんにとっては意味がない。

 それに、こうなってしまったのは私のせい。どうにかしないと!

「やっぱりダメです、永田先生はアミさん達の所に戻って下さい!」
「いいよ別に。あいつらとはまた近いうち会うだろうし」
「でも……!」

 何と言えば、永田先生はアミさんの元に行ってくれるのだろう?言葉を探していると、

「飛星……?」

 後ろから声がした。

 よく知る声にドキッとしてそちらを振り返ると、やはり、そこには比奈守君が立っていた。

「夕、どうして?夜、電話してくれるって……」
「声だけじゃ足りない。部屋の前で、飛星の帰り待ってた」

 比奈守君はうつむいていた顔を上げ、永田先生の方を見た。

「人と会う予定って、永田先生のことだったの?」
「違うの、これには色々ワケがあって……!さっきまでは純菜も一緒だったし、永田先生と二人きりだったわけじゃなくて」

 しどろもどろな言い訳。だけど、それでも比奈守君なら分かってくれる。ーーなんて、それは都合のいい考えだった。

「最近俺のこと避けてたでしょ」
「それは……」
「そんな状況の時に男といるとこ見せられたら、いい気しない」

 頭が真っ白になる。言いたいことは山ほどあるのに、こうして指摘されると何から話せばいいのか分からなくなった。とても、合コンのことなんて話せる雰囲気じゃない。

 私は比奈守君のことを傷付けてしまった。あんなに好きだと言っておきながら自分の都合で勝手に避けて、大事な話も後回しにして……。

「ちゃんと話がしたくて、それでここ最近考えをまとめてたの……!だから……」

 ようやくそこまで言ったものの、比奈守君の瞳は私を拒否するみたいに冷たかった。

「考えまとめるために、自分に気のある男を頼るんだ。どうして?」
「違うの、それは誤解だよ!そうじゃなくて……」

 何を言っても、きっと今は通じない……。そう思えて涙がこぼれそうになった。泣いたって何も解決しないけど、比奈守君をそんな風にしてしまった自分が情けなくて、私の体は震えた。

 しんと静まる。夜の静けさの中に、永田先生の声が響いたのはすぐだった。

「なるほどね。そりゃ大城先生もストレスたまるわけだ。彼氏の肩書き持ってるってだけでそんなこと言われたんじゃ安心して寄りかかることもできないよな」