「そうですよね……」
分かっていたことだけど、自分の頭の中で考えているだけの時と違い、他者からはっきりそう言われるとショックが大きかった。永田先生の言葉が、音を立てて胸に突き刺さる。
「大丈夫?はっきり言い過ぎたな」
「いえ、大丈夫です。分かっていたことですから」
「ううん、ごめん。ちょっと私情混じってた」
永田先生は苦笑し、片手で髪を乱した。
「本当のこと言うと、僕は今でも大城先生のことが好きなんだ。あの日プールでいちゃつく君達を見てしまった時、早く別れたらいいのにって思ったし」
「すいません、あの時は……」
「あの時、比奈守君に反撃されて腹が立ったよ。その通りだったから。こっちは3年近く好きだったのに、比奈守君は出会ってわずかな身で大城先生を虜にするんだから……。悔やんでも悔やみきれなかったなぁ」
永田先生がわざと明るくしゃべっているのが分かった。そのノリに合わせて、私もふざけたように問いかける。
「それならどうして、私達の関係を学校にバラさなかったんですか?そうすれば、永田先生の望みは叶ったかもしれないのに」
「そうだろうね。でも、大城先生がそれを望んでないの、わかってるから」
「え……?」
「君が他の人を好きなのは嫌だけど、だからってそれを壊すような真似もしたくないってだけ」
「永田先生……」
「好きだから悩んでるんでしょ?結婚したくないなら彼にそう言えばいいのに」
「そしたら私は、親にお見合いさせられるんです……!」
結婚しないのなら、比奈守君とは別れなきゃならなくなる。それが分かっているから、私は彼に本音を押し通せないんだ。
「親なんて関係ないよ」
永田先生は落ち着いたまなざしで言った。
「冷たい言い方になるけど、親は僕らより先に居なくなる。子供はね、最終的には自分で判断し選択し生きていかなきゃならないんだよ。大城先生のご両親はそれを分かってないから、君がよけいな悩みを抱えるはめになる。違う?」
「その通りです」
「親を大事にすることと何でも言いなりになるのは別問題だよ。今後、比奈守君とどうなるかは、君次第だ。まあ、もし比奈守君とダメになったら僕のところにおいで?いつでも結婚できるよ。貯金もけっこうあるし、いい旦那になる自信もある。次付き合う人とは結婚したいと思ってるしね」
永田先生も多少なり酔っているのか、軽い口調でそんなことを言った。本音なのか冗談なのか分からないし、反応に困る。でも、話を聞いてもらって元気が出たし、励ましてもらったことは素直に嬉しかった。
「ありがとうございます。親のことは抜きで、比奈守君ともう一度話し合ってみます」
「うまくいくといいね」


