「恋って、認めて。先生」


 なぜこんなことになっているのか分からないまま立ち上がり、私は永田先生を起こすため声をかけた。

「永田先生……!」
「…………ん」

 ゆっくりまぶたを開け、永田先生は私の顔を見つめた。

「ごめん、寝てた。もう大丈夫?」
「すいません……。ご迷惑をおかけしたみたいで……」
「それだけ意識がはっきりしてるならもう心配ないな。とりあえず座ったら?」

 目線でうながされ、私はおずおずと永田先生の隣に座った。

「あの、エモやアミさんは……?」
「アミ達はさっきの店を出てカラオケしてる。大城先生が寝ちゃってエモちゃんもどうしたらいいか分からないみたいだったから、僕がここへ連れてきたんだよ。外の方が酔いもさめると思って」

 よく見ると、この公園はさっきの店からすぐ来られる距離にあった。たしかに、店内より空気が澄んでいて夜風も気持ちいい。

「大城先生が起きたら合流するよう言われてるんだけど、どうする?」
「すいません、私はもう帰ります」
「わかった。アパートまで送るよ。アミにも伝えておくから」

 永田先生は言い、スマホでタクシーを呼び出した後、アミさんにも連絡してくれた。

「タクシー、10分くらいで来るって。アミもお大事にって」
「ありがとうございます。でももう大丈夫ですから、一人で帰ります」
「説得力ないな」

 永田先生は笑い、家まで送ると言い切った。意識を無くすまでお酒を飲んだのはこれが初めてだったので、正直なところ自分で自分が心配だった。いつもなら絶対に断るけど、今回は永田先生の厚意に甘えることにした。体内にアルコールが残っているのがよく分かる。


「あの時も、こうやって大城先生と夜の公園で話したっけ」

 永田先生が穏やかにつぶやく。

 それは、3年前の今くらい…夏の蒸し暑い夜のことだった。

 ヨシに振られたばかりで毎日落ち込んでいた私は、ある日、職場の先生方と夕食を食べに行った帰り、こうして永田先生に面倒を見てもらったことがある。

「あの時もやけに酒を飲んで、フラフラになってたよな」
「あの時はほんとにすみませんでした。教師になりたてだったとはいえ、社会人としての自覚が足りなかったと反省しています」
「僕は嬉しかったけど?」
「え?」
「大城先生は覚えてないかもしれないけど、あの時君は酔っていて、プライベートなことを自分からすすんで色々話してくれたんだ。彼氏と別れて寂しいとか、料理作りが趣味とか、そういうことをね」
「そ、そうだったんですか…!?」

 私は何てことを…!自分のしたことなのに全く記憶にない。恥ずかしすぎる!一気に顔が熱くなった。