「飛星は冷静だよね。永田さんと毎日職場で顔合わせて、そういう気持ちになったりしないの?」
「ないなぁ……。かっこいいとは思うけど、意識したりとかは全然」
「冷静だね〜!あ、そっか、彼氏できたばっかだもんね!だったら分かる!」
おしゃべりなエモには極力彼氏がいることを隠しておきたかったけど、会ってしまうとどうしてもそれは無理があった。
比奈守君は毎日ラインをくれる。先日顔合わせをした時も、食事中比奈守君からラインが来たので、その時の私の様子を見ていたエモは、私に彼氏ができたことを目ざとく気付いてしまったのだ。純菜は比奈守君の存在をエモに黙っていてくれたのに、申し訳ない。結局自分でバラすことになってしまった。
「彼氏どんな人なの?永田さんよりかっこいい?」
今までずっと訊きたかったんだと言わんばかりに、エモはキラキラした目で質問してくる。まいった。生徒と付き合ってるなんて、絶対に言えない。
「まあ、私の話はそのうちってことで、エモは最近どうなの?」
「私〜?付き合ってそこそこ経つし、新鮮さが薄れてきたよ。永田さんみたいな人と付き合ったら毎日ドキドキしっぱなしなんだろうなぁ!心臓もたなさそう」
ホッ。なんとか話をそらせた。にしても、エモは本当に永田先生のことが好みなんだな。彼氏より永田先生に興味の全てが向かっている感じだ。
「永田さんに告白されて断る女はいないだろうね〜」
エモの言葉にドキッとした。
「私も教師になればよかった〜。放課後、永田さんみたいなイケメン教師に呼び出されて壁ドンとかされたい」
「ドキドキだね、それは」
エモと何でもない会話をして、色んな種類のお酒を飲んだ。美味しい食べ物を口にするたび、比奈守君と一緒にこの店に来たかったと考えてしまった。
ーー…あれ?いつの間に眠ってしまったんだろう!?
今までエモと話してたはずなのに、その姿はどこにもない。アミさんや男性達の姿も消えている。そもそも、ここは店ですらない。
目が覚めると、私は夜の公園にいた。遊歩道を目の前に、ぼんやりした頭で一生懸命状況をつかもうとしていると、左頬に人の感触を感じた。
「……!?」
そこから勢い良く離れると、ベンチに座って目を閉じる永田先生の姿があった。私は今まで、永田先生の肩にもたれて眠ってしまっていたらしい。
一気に目が覚め、血の気が引いた。


