「恋って、認めて。先生」


 合コンを開いてまでアミさんが永田先生と会おうとした理由が、ようやく分かった。直接誘っても断られるから、あえて遠回しなやり方で永田先生を誘うしかなかったんだ……。

「出会ってからもう10年以上経つのに、私、永斗と二人きりで会ったことないんだ。一度も……」

 アミさんは切なげに言った。

「……アイツには好きな子がいるし、なおさらだよね」

 なんて答えたらいいのか分からなかった。どんな前向きなことを言っても励ましにならないし、今日知り合ったばかりの私が知った風なことは言えない。

 何より、私は永田先生から食事に誘われ、告白までされている。そんな立場である以上、アミさんに言える言葉なんて何もなかった。


 言葉につまっていると鏡から視線を感じた。そちらを見ると、鏡越しにアミさんと目が合う。そらそうにも、彼女から目をそらせなかった。

「今日、告白するって決めてきたの」

 決意のこもったアミさんの瞳に、私は緊張した。

「そうだったんですか……」
「やめといた方がいいかな?」
「それは、私が決められることでは……」
「だよね、ごめん」

 アミさんは私から目をそらし、自分の髪を指先に巻きつけ、うつむいた。

「絶対勇気出すって決めて来たのに、本人前にすると弱気になる。……永斗の好きな人って、飛星ちゃんだったんだね」
「それはないと思います…!」

 そう言うしかなかった。アミさんは私の頭をポンポンとなで、クスッと笑う。

「ごめんね、困らせた。永斗の元カノ、私の友達なんだよ。あの二人が別れた時に彼女から話聞いてたから、だいたいのことは分かってる。他に好きな人ができたって理由で永斗から別れ切り出したってことも……。永斗の行動範囲考えたら、その相手ってのは職場以外にないかなーって、なんとなく思って。って、飛星ちゃんには彼氏いるのにこんなこと言われても困るよね」

 鏡に背を向けるようにし、アミさんは洗面台に軽く腰をかけた。

「永斗が誰を好きでもいいの。私ね、昔から永斗のことが好きだった。それをアイツにも覚えておいてほしいの。アイツを忘れるために他の男と付き合ったりもしたけど、やっぱりアイツは特別だから。告白してフラれたらきっぱり忘れられる、そんな気がする!」

 アミさんのまっすぐさがまぶしくて、同時に胸が痛んだ。永田先生のこと、そんなに深く好きなんだ。私はどうだろう?

 比奈守君と付き合って、早くも結婚話にまで発展しているというのに、私は彼のことをまっすぐ想えているのだろうか?