「恋って、認めて。先生」


 なんてことだ……!合コンなんて行きたくないっ。昔からこの手の誘いは何となく苦手で、理由をつけて断っていた。

 そうでなくても、今は比奈守君がいる。彼が嫌がりそうなことは絶対したくない。


 比奈守君との交際を理由に断ろうかと思ったけど、彼との関係は極力人に隠しておきたい。どこからどう話が漏れるか分からないからだ。

 琉生や純菜は大丈夫だと信じているからいいとして、エモの場合、正直微妙だ。

 彼女は決して悪い子じゃないし、好きな友達のひとりであることはたしかだけど、エモはとても口が軽いのだ。人から聞いた内緒話とかを、場を盛り上げるため他の人にアッサリしゃべってしまうということが、大学時代からよくあった。悪気がないのでなおさら憎めない。

 相手が誰であるかを隠して「彼氏いるから行けない」と言う手もあるけど、エモは琉生に負けず劣らずの恋愛体質でそういう類の話が大好きだ。長い間彼氏がいなかった私に恋人が出来たと知ったら、アレコレ詳しく尋ねてくるに決まっている。

 黙っておきたいことも、屈託(くったく)ないエモを前にすると不思議としゃべってしまわなきゃいけない気持ちになるから、困る。

 それに、エモにも今彼氏がいるはずだ。それでも断れなかったということは、エモの職場の先輩とやらは、かなり強引に今回の合コン話を持ちかけてきたのだと見える。

「悪いけど、私は仕事があるからごめんね」

 無難な理由で切り抜けようとしたものの、やはり、そんなことで納得してくれるほど、簡単なお誘いではなかった。

『合コン、夜からだから仕事帰りでも全然いいよ!』
「でも、私、そういうの行ったことないから苦手だし、うまくしゃべれる自信ないから」

 ここまで言えば分かってくれると思ったけど、ダメだった。

『そうだよね。でも、どうしても今回は人集めなきゃいけなくて……。飛星がそういうの苦手なのは知ってたし、他の子にも声かけたんだけど、旅行行くとかで皆都合つかなくて』

 旅行か!その口実があった!……と、気付いた時は遅かった。

『先輩がね、どうしても付き合いたい男が知り合いにいるとかで、この合コンはその人をおびき寄せるための作戦というか……。私も最初は彼氏いるって言って断ったんだけど、そういう話聞かされたら、先輩だし断りにくくてさ。つまらなかったら私達は適当に女同士でしゃべってていいよって言われたし、ダメかな?』

 しょんぼりした声でそんな話をされたら、断るのが悪く思えてきた。要は、私達は、その先輩の恋をサポートするためにセッティングされた舞台…小道具みたいなものというわけか。

「分かったよ。仕事の後でいいなら少しだけ顔出すよ。翌日も仕事だからあまり遅くまではいられないけど、いい?」
『全然大丈夫!!ありがと、飛星!』

 明るい声音に戻ったエモは、さらに頼み事をしてきた。

『あと一人、飛星の友達で、誰か連れてこれない?彼氏いる子でもいいから。私じゃもう、集められる気がしなくて……』


 結局私は断れず、純菜を巻き込んで来週の合コンに参加することになってしまった。
 
 さっき琉生と話し、比奈守君を大切にすると改めて決めたそばから、とんでもないことになったと思った。

『来週はそんなに残業ないし、彼氏もいないし、ちょっと楽しみかも』

 合コンに誘った時、電話の向こうで純菜が穏やかにそう言ってくれたことが、せめてもの救いだった。