片耳の聞こえない少女と新撰組




「んー…!洗い物終わってー洗濯も終わってー掃除も終わってーあとは夕食待ちでーなにしようかなー……♪


寝るか!」
「なんでだよ!」




昼御飯を食べ終えやること全部終わって暇だったので土方さんの部屋に浸り入っていた。




「はぁ…。
暇なら斎藤の小姓でもしたらどうだ?」


「今稽古中なんですぅー!
あっ、私も混ざるか…」


ぼそっと呟いた私の言葉に土方さんが目ざとく反応した。
 


「……使えんのか?」

「?あぁー、剣術ですか?
軽くなら教えてもらってました。」

「まじか…?」
「マジです」




土方が少し考え込むその様子をちらっ、と確認した。




懐かしい、な…。






「“切る刀ではない、守る刀であれ”」

「…あぁ?」



「私に剣術を教えてくれた…先生の言葉です。だから私はきっと敵も味方も切れない……
全てを守りたいと思ってしまうんです。」

「……」



「それでもいいなら……もし、私の力で大切な人たちが守れるなら…
私を隊士にしてください」



「……なに企んでやがる?」

「あり、ばれましたー?」

先程までの重たい空気が消え、おどけた声で言い放った。


土方さんはそれにため息をつく。


失礼な、ため息つくと幸せ逃げるのにーー。




「真剣なんだかふざけてんのか全くわかんねぇな、てめぇは…」

「ふふふっ、真剣ですよ?
でも、重たい空気は嫌いなんです!」


えへへ、と笑うわたしに呆れながらも許してくれる土方さんに温かい気持ちになる。



土方さんって、全然怖くないよね、むしろ誰よりも優しい。




「隊士にしてほしいのは、
そっちのが今後動くのに便利なんです」

んー…と伸びをし立ち上がる。
一応話しておこう。



「歴史を私は変えます。
でもこれから起こる未来を直接土方さんに教えるつもりはありません。ただ、私の時々発する謎の言葉で推測してくださいね?」


にぃ、といたずらっ子のような笑みを土方さんに向ける。









「たく…
とりあえず、隊士に出来るかどうかは腕を見てからだ。もしダメなら斎藤の小姓をしながら動け」
「はーい!」



先生…か。
そういえばこいつ自身のこと全く知らねぇな




土方はそう思うと少しつばさのことをみつめると立ち上がり、二人で稽古場に向かうのだった。