朝から降っていた雨は、
タイミングよく止んでくれた。



今年から大学生。



いい節目だったし
あの家から出たかったから、
一人暮らしをすることに決めた。



親は学費も家賃もたすけてくれない。



だから安い物件は本当に有難かった。



不動産屋さんは私から事情を聞くと、
すぐにあの部屋を勧めてきた。



とにかく安いのが売りですって。



写真を見る限り、
そんなにボロボロでもないし、
駅から遠いわけでもない。



どうしてこんなに安いのか。



その理由は……



幽霊がでる噂がある部屋だから。



私には霊感もなかったし、
幽霊なんて信じていなかったから、
すぐにあの部屋に決めた。



「ふう。やっと着いた。」



実家から遠い大学を選んだため、
アパートも遠い。



私は重たいスーツケースを引きずり、
大家さんの部屋のチャイムを押した。



《ピンポーン》



「はーい。」



ドアをあけてでてきたのは、
いかにも感じのいいおばさん。



おばさんは私を見て会釈して、



「202に来た子だよね?」
「はい。お世話になります。」



大家さんは一度部屋に戻り、
鍵を持ってきてくれた。



「はい、これ。」
「ありがとうございます。」



私が鍵を受け取ると、
おばさんは軽くこのアパートについて
説明をしてくれた。



ごみを出す日や、掃除の日。
そして、私の部屋について。



ここのアパートは一階と二階に
それぞれ3つずつ部屋があり、
私が引っ越した202は真ん中の部屋。



でもこの部屋のせいで、
両隣はいないらしい。
だから、二階はぜんぶ空き部屋。



ーここまでくると気持ち悪いな…



私はそう感じながらも、
大家さんに軽く一礼して
二階に上がった。